围绕着一件雨衣的小说风断片

楼主: nono0520 (和米基喝杯咖啡)   2016-07-14 21:08:17
村上春树1981年写的(像小说的)文章,这篇村上春树作品集未收录,也完全查不到资料,
读过的人应该非常非常少(包含日本读者),可以算是一篇被遗漏掉的短篇,原刊行的杂志
‘男子专科’最近公开全文,我们才知道原来村上写过这样一篇短篇,文章中从一个场景
扩张开来的小说写法,村上春树真的也是这样创作,《黑夜之后》、《人造卫星情人》都
是这样写的。
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http://danshi-senka.com/archives/499
一着のレインコートをめぐる小说风断片 / 村上春树
例えば小说を书く。
もちろんちょっとしたスケッチでもいい。これなら简単た。头の中にふと浮かんだひと
つのシーン、それで十分だ。
例えば・・・・・・登场人物は1人の男、外は雨。季节は11月、秋の终わりの雨だ。そ
れは氷のように冷やかな冬の雨でもなく、思わず手のひらに受けてみたくなるような温
かい春の雨でもない。とにかく、それは11月の雨だ、まずそこから始めよう。
雨は休みなく降り続いていた。いったいいつから降り始めたのか、谁ひとり覚えてはい
ない。そんな雨だ。最初の水滴が微かな予感のように音もなく地上に舞い下り、长い时
间をかけて雨へと変わっていった。人々が気づいた时にはアスファルトの舗道はすでに
黒く染まり、ところどころに小さな水たまりさえ作り出していた。それは1枚のカーテ
ンのように、ひとつの季节を区切る雨だ。
広い草原のまんなかにぽつんと车を停め、一人ぼっちで温かいスープでも饮みながら眺
めたくなるようなタイプの雨だな、と彼は思う。きっとテレビのコマーシャル・フイル
ムにでもなったような気がすることだろう。悪い気分じゃないかもしれない。しかしも
ちろん、彼のいる场所は広い草原のまんなかなんかじゃない。彼を取り囲んでいるのは
多くの人々が长い时间と膨大な労力を注ぎ込んで筑き上げたコンクリートの巨大な迷路
だ。都市---自动ドアとエア・コンディショナーとパーキング・メーターの壮丽な歓
楽宫。
彼はウエイトレスの运んできた2杯目のコーヒーに口をつけ、そしてなかば反射的に腕
时计を眺める。4时15分。
これがシーンだ。
このシーンが语っているものは、11月、雨、都会、吃茶店、夕方、そして男をくるんで
いる軽い倦怠感・・・・・・そんなあたりだ。
次に小说が为すべきことは、この男への肉づけだ。彼は何歳で、どんなタイプの男で、
いったい何を考えているのだろう? 急ぐことはない。プラモデルを组みたてる时のよ
うに细かい部分からゆっくりと始めよう。
まず最初に、コートだ。
彼の座った隣りの席には、雨の色に染まったレインコートがぽつんと置かれていた。シ
ートが濡れないようにライニングを表にして小さく折り畳まれたレインコートの姿は、
まるで年老いた小动物のように见える。きっともう10年は使い込まれているのだろう。
ぶ厚いベージュの中にうっすらとかすんだ白が混じり、肩口には脱けがらのような奇妙
な温かみが漂っていた。気持のよいくたびれ方ではあるにしても、くたびれていること
に変わりはない。一流ホテルのクローク系なら、5ミリくらいは眉をしかめそうなコー
トだ。
しかしそのコートはぴったりと彼の体に驯染みそうに见えた。别な见方をすれば、その
コートは彼そのものだと言うこともできる。歳月かゆっくりと彼を擦り减らせてきたよ
うだった。歳は28から33。そのうちのどれを言われても、殊に反対する理由もない。あ
なたは目をつぶってカードを引く・・・・・・31、それが彼の歳だ。まるで何かの记念
品のようにアドレセンスの影を引きずりつづけ、ある日それがプツンと切れてしまった
ことに気づく。そんな歳だ。
・・・・・・これがコートだ。书きながら、仆にもこんなコートがあればいいな、と思
う。そしてそのコートのことを少し考えてみる。それも文章を书くことの楽しみのひと
つだ。きっとハンフリー・ボガートが着ていたような大柄のトレンチ・コートに违いな
い。フラップつきの大きなポケットがついていて・・・・・・ポケット?
そうだ、ポケットの中にはいったい何がはいっているんだろう。もちろん表からは见え
やしないけれど、がっかりすることはない。 コートのポケットをひっくりかえす、そ
れたけのことだ。例えば・・・・・・
男はもう一度腕时计を眺める。4时22分。とりとめのない奇妙な时间だ。人は午后4时22
分にいったい何をすればいいのだろう。酒を饮み始めるにも、髭を剃りなおすにも早す
ぎる。梦を见るには遅すぎる・・・・・・おそらく。
彼は何分か迷ってから、脇に置いたコートを手に取ると、両方のポケットに手をつっこ
んで中身をガラスのテーブルの上にあらいざらい并べてみる。まるで死体を渔っている
ようだな、と彼は思う。それも自分自身の死体、まだ微かな温もりの残った死体だ。ま
あ、いいさ。死ぬのは怖くなんかない。嫌なのは雨と、この夕暮前の一刻だ。彼は一度
だけ头を振って、テーブルの上に意识を集中する。
まず最初に茶色いコードヴァンの札入れ、中には何枚かの札と名刺が无造作につっこま
れている。たいした额の金ではない。女の子と2人でホテルのバーにでかけて2时间ばか
り気持よく酒を饮み、彼女をタクシーで家まで送り届ける、その程度の金だ。
次に饰り気のない银メッキのキー・ホルダー。25歳の诞生日のちょっとした记念品だ。
そこにはアパートの键、そしてわけのわからない(本人でさえ用途を忘れてしまったよ
うな)ふたつの古い键。何処かで键穴を丧失してしまった2本のモニュメントだ。
长い间使い込まれてきた黒いビニールの手帐と细いシャープ・ペンシル。音楽会の半券
が2枚。そしてバラバラの小銭。白いハンカチが1枚。
彼は小銭を何列かにきちんと并べ、残りの品物をもう一度コートのポケットに収める。
そしてコートを丁宁に折り畳み、椅子の上に戻す。
4时28分。彼は小さなため息をつき、无意识に肩をすくめる。
さて、これがボケットの中身だ。めぼしいものがあるわけではない。そこにはいってい
るものはささやかな生活の匂いだ、おそらく彼はそれほどの金持ちではないだろう。も
っとも贫乏なわけでもなさそうだ。趣味だって悪くはない。少なくともルイ・ヴィトン
の札入れを持ち歩くというタイプじゃない。自分なりの世界でそっと生きつづけ、他人
に対してうまいことばがみつからないままになんだか疲れてしまった。そんなあたりか
もしれない。
ガールフレンドが1人いるかもしれない。コンサートの半券が2枚、おまけに同じもぎり
方だ、そして2人ともお互いに少しくたびれ始めているのかもしれない。彼はあまりに
も雨を気にしすぎるし、あまりにも时计を眺めすぎる。
4时35分、彼は片手に小銭を握り、レジスターの脇の赤电话に向かう、そしてダイヤル
を回す。何百回と回してきたナンバーなのに、まるでとりかえしかつかないほどもつれ
てしまった数字のかたまりのような気がする。何回かベルが鸣るあいだ、彼は胸のポケ
ットから烟草を取り出し、湿っぽい纸マッチで火を点ける。烟草までがどこかで湿って
しまったような味がした。
ベルは沈黙の中で际限なく鸣りつづける。7回、8回、彼はべルの数を数えながら自分の
足もとを眺める。朝にはしっくりに足に驯染んでいたキャメルのデザート・ブーツは雨
に濡れて黒く染まり、洗ったばかりのコーデュロイのズボンはすでに膝が抜けかけてい
た。まるで他人の足みたいじゃないか。
11回、12回・・・・・・
いや、结局はこれが俺の足なんだ。俺はこの足で、これからどれだけの距离を歩かなき
ゃならないんだろう。
15回までベルの音を数えてから、彼はそっと受话器を置く。
通りではまだ雨が降りつづけていた。弱まるわけではなく、かといって强くなるわけで
もない。のばされた思い出のように、雨はこのまま永远に降り続のくかもしれない。
まるで水族馆の中にいるようだな。彼はふと、子供の顷に何度も通った近所の水族馆の
光景を想い浮かべる。人通りの途切れた暗い水族馆の通路だ。冷やりとした水槽のガラ
ス窓に何度も頬を押しつけてみたっけ・・・・・・。
信号が青に変わり、彼は歩き始める。伞はどこかに置き忘れてしまったようだった。両
手はまるで呪缚にかけられたように、コートのポケットの中にすっぽりと収められてい
た。不思议だ、よりによって雨の日に伞を忘れちまうなんて。
街は芯までぐっしょりと濡れていた。そして歩くにつれて彼のレインコートも黒みを帯
びていくようだった。草原のまんなかに辿りつく前に、俺の体はきっとこわばって、こ
のまま雨の街に闭じこめられてしまうのかもしれない、と彼は思う。
信号が赤に変わり、彼は立ち止まって口に烟草をくわえる。迷路のようなコートのポケ
ットから纸マッチを取り出すまでに、ずいぶん长い时间がかかった。

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